Fate / in the world
027 「ヘブンズ・ブリッジ」 前編
「アルトリア、今神父様から連絡が入ったわ。行方不明だった深山の住人達が
携帯電話を切った凛が深刻な表情で話しかけてきた。
その内容は絶望的とも言えるほどの防衛戦への助力。
絶望的? いや……何を弱気になっているのだ、私は。
自軍を圧倒的に上回る規模の敵軍に包囲された戦いなど、生前から何度と無くくぐり抜けてきたではないか。
「行くのですね? 凛。ならば何を迷う事があるというのです。貴女が戦場に赴くというのならば、私はその敵を打ち滅ぼし、御身を護るだけだ」
「……ありがとう、アルトリア。でも、絶対に無理はしないでね。こっちはまだ魔力も回復してないし、相手の
なるほど凛の迷いもよく解かる。
こちらの魔力不足に加え、相手はあの泥にぬれているときていている。
しかも、私の左手は不自由なままだ。
ここまで不利な状況というのも中々に珍しいでしょう。
ですが凛、騎士王の名にかけて、貴女を無傷のままシロウに会わせて見せます!
「わかりました。大橋へ急ぎましょう、凛!」
「そうね、行くわよ、アルトリア!」
「はい!」
お互いにヘッドセットを付け、凛は宝石の入ったポーチを、私は鎧を身につけ戒厳令下の如く人のいない新都を大橋へと走る。
ホテルから大橋までは、急げば五分と掛からない。
その前に、伝えるべき事を伝えておかなければ……
「凛、走りながら聞いて下さい。もしも、この先の戦いで私があの泥に飲み込まれるような事があったならば、その手に残った令呪で私に自害を命じて欲しい」
「なっ?! 何言ってるのよっ!」
思わず立ち止まってしまった凛に、私も止まって相対する。
「あくまで仮定の話ですが……その覚悟が必要だと言う事です。この剣を貴女やシロウに向けるような事の無いように……約束しましたよ? 凛」
「……大丈夫よ、絶対アルトリアにそんな事させないから!」
怒りすらその表情に乗せながら、私のマスターが断言する。
ほんとに、貴女らしいですね、凛。
「ええ、私とてこんな所で消えるのはごめんです。それに……シロウに会いたいですから」
ニコリと笑って、そんな事を言ってみた。
まあ、本心でもあるのですが……
「ッ?! もう! 急ぐわよ、アルトリア!」
「はい!」
そうだ、シロウがこの冬木にやって来るというのに、ここで消えるなど冗談ではない。
私も凛も、無事にシロウと再会するのですから!
決意を新たに前方へと向けた視界には、スポットライトを浴びたように大橋の全景が夜の帳に浮かび上がってきた。
Fate / in the world
【ヘブンズ・ブリッジ 前編】 -- 蒼き王の理想郷 --
冬木市の中央を東西に分断する未遠川、その東側は近代的に発展した新都と呼ばれる土地であり、西側は古くからの町並みを残す深山と呼ばれる土地である。
その未遠川に渡された東西を結ぶ冬木大橋の中央から、幾分深山側へと移動した車道に私達は陣取っている。
既に橋の西詰めには、その数幾千に届くかというほどの
協会から派遣された執行者とその部下たちによって敷かれた多重結界も、数多の人外による干渉でいつ破られるともしれない。
まさに今、この大橋は生死を分かつボーダーラインとなっている。
「いかんな、もう数分と持たんぞ。神父、ミス・トオサカ、悪いが力を借りたい」
執行者がその表情に幾分の焦燥を顕にして、話しかけてきた。
「ミス・マクレミッツ、ここは冬木でわたしはその管理者よ。むしろわたしがお願いするわ」
「皆さん、近接戦闘の際にはあの泥に触れぬようご注意を。よければこれをお使いください」
そう言って、ファーザー・ディーロは十本程の黒鍵を道に並べた。
執行者やその部下の魔術師たちがその黒鍵を手に取る。
「アルトリア、絶対に無理をしない事、倒した奴でもその泥に気をつける事。良いわね?」
「はい」
凛の忠告に応じながら、視線を前方へと向ける。
恐らく今の魔力量では
ましてや、"
しかも、左手は剣に添えているだけで、握りこむ握力は戻っていない。
となれば……
剣を覆う風王結界をキャンセルし、身につけていた鎧も霧散させ可能な限り魔力の温存を図る。
その上で機動力と瞬発力で敵を翻弄し、直感を最大限に働かせて危機を回避するしかない。
「結界、破られます!」
執行者の部下が叫ぶ。
それと同時に、
――パーン!
と乾いたような音がした瞬間、大橋の西側から
ここに八対数千の戦いが幕を上げる。
「行くわよ! ――
凛が詠唱と共に握りこんだトパーズを投げつける。
浄化の魔術に巻き込まれた一団がその姿を灰のようなものへと帰されていく。
「行きます! はぁぁぁ――っ!!」
最大戦速を持って、凛が穿った空間へと突進し、勢いそのままに数体の
後方からは更に詠唱が聞こえ、炎や浄化の魔術が発動される。
私の突進にワンテンポ遅れて突っ込んできたファーザーも黒鍵や聖水で応戦している。
反対側では、執行者がルーン魔術と黒鍵を駆使しながら次々にグールを倒している。
つまり、戦線は私とファーザーそして協会の執行者、この三名で維持しなければならない。
一体一体の力は全く驚異に値しないものの、如何せんその数が圧倒的に違う。
その上、斬撃の後にも泥を気遣いながらの戦いでは、どうしてもジリジリと戦線を後退させられて行く。
クッ! このままでは……
その一瞬の弱気な心が僅かに判断を鈍らせた。
至近距離で周囲を五体の
「
その瞬間、凛の詠唱と共に私の周りの
『アルトリア、弱気は禁止よっ!』
「すまない、凛!」
ヘッドセットから響いた叱咤の声に応じながら、更に数体の
既に大橋の中央付近まで押し込まれた戦線を、八名が獅子奮迅の働きで押し止める。
そして……
「はぁぁぁ――っ!!」
気合一線、横薙ぎに数体を切り飛ばすと同時にバックステップで間合いを取り、その反動で更に突進を掛け斬り込もうとした相手は……
「そ、そんな……ライ、ガ……」
いつもシロウを凛を、私までもを気にかけ、孫のように可愛がってくれた藤村雷画の変わり果てた姿だった。
『アルトリア! 下がって!!』
凛からの指示が聞こえるが、今私が下がってしまえば、ここが戦線の穴になってしまう。
かと言って、私は……
『アルトリア! わたしがやるわ! あなたは下がりなさい!!』
「いけません凛! 貴女がそのような業を背負う必要など!!」
今まさに戦線が崩れようかというその時……
『まったく……気負い過ぎなのだ、君たちは。それにな、そのようなつまらん業を背負うのは、昔から"
ヘッドセットから聞こえてきた、その聞き間違える筈のない声は……
瞬間、大橋の後方遥か数キロ先のビルの上に、青白色の輝きを伴った巨大な魔力の発動を感じる。
――ダンダンダンダンダンダンダンダンッ!!
同時に、四千メートルの距離を刹那で無にした白銀の豪雨が、寸分違わず
一息に前線を離脱した私達のタイミングを見計らったかのように、降り注いだ黒鍵が業火を生み群がる
「シロウ!」
『士郎!』
まるで百万の援軍を得たかのように、私と凛の声が弾ける。
『対軍殲滅は任された! 君たちはそこで抜けてくる奴を仕留めてくれ!!』
シロウの指示とともに、第二陣の黒鍵が飛来する。
それは、天から降り注ぐ流星群の如き光景だった。
――ダンダンダンダンダンダンダンダンッ!!
直後に広がる火葬式典の業火は、ものの数分でその戦線を大橋の西詰めまで押し戻してしまった。
「な、なんだこの異常な数の黒鍵の射撃は! それに、火葬式典だと?! 一体どこから?」
驚愕の眼差しで、眼前に繰り広げられる対軍戦闘を見つめる執行者。
「ミス・マクレミッツ、安心して下さって結構ですわ。これはわたしの弟子の攻撃です」
そう言って、凛は大橋の遥か後方、新都のセンタービル屋上を指さした。
「ば、馬鹿な……数キロも離れたあの位置から、これほど正確な射撃を行っていると言うのか?」
確かに……シロウの驚異的な超長距離射撃を知っていた私でさえ、この距離と正確さには再度驚かされた。
そんな事を話している間にも、黒鍵の雨は止むことを知らずに、
「これで完全に形成逆転です。残りは僅かにあの炎を抜けてきたものだけ。凛、一気にかたを付けます!」
「ええ! 士郎だけに負担を掛けるわけには行かないものね!」
八プラス一対数千の戦いは、ここに幕を閉じた。
私達が残り僅かとなった
トリコロールカラーのCBR1000RRにまたがり、紅い外套を翻すその姿は……
「仮○ライダー?」
きっと、その場の誰もがあえて言わないようにしていたその言葉を、遠慮無しに言ってしまうところが貴女らしいと言えば貴女らしいのですが……
乗ってきたバイクを止め、こちらに近づいてきたシロウは、
「凛、君な……はるばる倫敦から助けに駆けつけた恋人への第一声がそれか?」
と、皮肉を込めた言葉を返した。
のですが……凛も私もシロウの言葉は右から左に流れてしまっている。
それは、シロウが纏った紅い外套の内側……
「シ、シロウ……その胴鎧は……」
「あんた……どうしたのよ……ソレ……」
凛も私も視線を釘付けにされ、目を離すことが出来ないでいるシロウが着込んだ胴鎧は……
「ん? ああ、これか。これは」
と、シロウが説明しかけたその時、突如その眼光を鋭くしたかと思えば、一足飛びで大橋の西詰めへと位置取り、
「
輝く七つの花弁を持って、私達へと向かって飛来したM18対戦車ロケットの爆発を封じ込めた。
それは単なる近代兵器ではなく、炎の魔術を併せた彼女特有の武器だ。
もしシロウが"
「カカカ、誰かと思えば衛宮の小倅ではないか。少し見ぬ間にずいぶんと成長したのぉ」
「やはり来たか……ミスター・エミヤ。もっとも君にとっては、あのまま倫敦にいたほうが幸せだったかも知れんが……」
アンナ・カミンスキーだった。
「ふむ、事の成り行きならある程度聞いてはいるが……"どうしてだ?"と尋ねるくらいの権利はあると思って良いかな? ミス・カミンスキー?」
一切の表情を消し去った面持ちでカミンスキーへと話しかける……シロウ……?
気のせいでしょうか? なんとなくシロウの雰囲気が……
「……そうだな、君達とは短く無い付き合いだ。そのうち、話す機会もあるだろう。それよりもだ……君は本当にあのミスター・エミヤなのか? 先ほどの住人達への情け容赦ない攻撃と言い、その身に纏う雰囲気と言い、以前の君とは随分感じが違うのだが?」
「フッ、貴女の変わり身ほど大きく変わってなどないさ。もっとも、そのような移り気が”熟女の特権”だと言うのなら何も言い返すことはできないがな……それに、情け容赦ない攻撃とは聞いて呆れる。そうさせた元凶の貴女がそれを言うのか?」
「……」
シ、シロウ?!
「まあ、そんな事よりもだ……貴様はどこの誰だ? 俺にはこんな”小汚い爺さん”に知り合いはいなかったと記憶しているのだが……」
シ、シ、シロウ?!
「……ワシはマキリ・ゾウケン、桜や慎二の祖父と言えばおぬしにも判るか?」
「なるほど……貴様がマキリの元凶か……それで、わざわざその姿を現したという事は、俺に殺されにきたと考えて良いのだな?」
と言いながらヤレヤレと両手を広げてポーズをとるシロウ。
今のはっ?! 私以外誰も気付いていない程に……
それに、やはり……気のせいではありませんね。
私同様に、凛までもがシロウの纏う雰囲気の違いに戸惑いを隠せないでいるのですから。
「カカカ、あまり調子に乗るなよ、小童が。おぬし程度の力量でワシを殺すなど百年早いわ!」
嘲笑を響かせながら、シロウの言葉をあざ笑うゾウケン。
ですが……
「たわけが、既に殺されている事すら気付かない奴が、何をほざく……」
そのシロウの言葉と同時に、左右の中空から飛来した干将と莫耶が、マキリ・ゾウケンの首を跳ね飛ばした。
話の最中に投擲した様子すら伺わせないほどの、鮮やかな攻撃。
その首を飛ばされた、マキリ・ゾウケンは腐臭のする血を噴出させながら、見る間に蟲の群体へとその姿を変えた。
そして、どこからともなく響くゾウケンの声……
――なるほど、半人前の小童かと思いきや……中々に血を流した殺人者の類であったか。だがのぉ、この程度ではワシは倒せぬわ。カカ、カカカカカ……
その声が消えると同時に蟲の群体もその姿を消していた。
「とんだ茶番だったな……さて、ミスター・エミヤ。もし君がミス・サクラを救おうとこの冬木にやって来たのなら……君はここで地獄を見る事になる。覚悟しておく事だな」
そう言って、アンナ・カミンスキーもその姿を闇へと消した。
「フッ……それこそ茶番だと言うのだ。地獄ならばとうの昔に見ているさ」
眼光鋭く、カミンスキーが消えた闇を睨みながらシロウが吐き捨てるように呟いた。
こうして絶望的と思われた冬木大橋での戦いの末、辛うじて生死を分かつボーダーラインを死守することに成功した。
「で? 何がどういう事なのか説明しなさい! 士郎!」
「「……」」
冬木大橋での決戦から、およそ三十分後。時刻は20:00を少し過ぎている。
私達の滞在するホテルのレストランで、遅めのディナーを取ろうとした矢先、凛の発した第一声がコレだった……
呆れ顔のシロウの気持ちもわかりますが……凛の気持ちもよくわかります。
私とて、シロウに問いたいことは山ほどあるのですから……
「凛、君のその大雑把な性格と魔術の狙いは、早急に直したほうが良いぞ?」
平然とスープを口にしながら、皮肉たっぷりそんなことを言うシロウ。
ちなみに、今私達の前に揃えられている食事は全てシロウの手によるものだ。
昨夜の一戦の後、ファーザー・ディーロの要請に従った教会の裏工作により、冬木一帯の住人を強制的に退避させたらしい。
つまり、当然のことながらこのホテルにも従業員なる者は存在しないわけで……
「あっそう……そうね、それじゃ師に心配かけまくる馬鹿弟子にも解かるように、事細かに尋問してやるわよっ!!」
「凛、少し落ち着いて下さい……」
「ふむ、アルトリアの言うとおりだぞ、凛」
ああ……それは火に油です、シロウ……
「うっさい! まず、その胴鎧よ! それってアーチャーの胴鎧そのものじゃない! 一体どこで拾ってきたのよ!」
それは私も気になっていたことですが……拾ってきたと言うのはいかがなものでしょうか?
「……先程も説明しようとしていたのだが……ルヴィアの執事がフランスから発掘してきたものだ。ラーンスロット卿の墓にあった物を彼女が手直ししたらしい」
「……」
あ、凛が固まってしまいましたね……
当然と言えば当然でしょう……今のシロウの言葉だけでも、突っ込みどころ満載ですからね。
「あの、シロウ? 凛に代わってうかがいますが……何故サー・ラーンスロットがそこで出てくるのでしょうか?」
「アルトリア、君は以前ラーンスロット卿との戦いの最後で彼が言った言葉を覚えているか? "何時の日か我が墓へと赴かれよ。貴公に譲りたいものがそこにあるのでな"と言っていただろ? それをルヴィアが忘れず独自に研究してその場所を特定していたらしい」
なるほど、良くはありませんが、まあ良しとしましょう。
「それは解かりました、ではルヴィアゼリッタの手直しが何故その型となるのですか? それではアーチャーの胴鎧そのものではありませんか?」
「それこそ、俺には解からないさ。まあ、きっとアイツもその生涯でルヴィアに出会っていたという事ではないか?」
なるほど、これも良くはありませんが、まあ良しとしてしまいましょう。
「ではシロウ、何故"ルヴィア"なのですか?」
――ビクッ!
あ、凛が反応しましたね。
「……特に深い意味など無いが……向こうも俺のことを"シェロ"と呼んでいるのだから、俺が"ルヴィア"と呼んでも問題あるまい?」
……問題しか無い様な気もしますが……
「……まあ良いわよ……全然良くないけど、良い事にしておいてあげるわ……」
あ、凛が復活しましたね。
「で? その胴鎧、かなりの神秘を感じるんだけどどういう物なの?」
「これ単体の能力としては若干の対物理、対魔力の向上だけなのだが……これの本当の能力は妖精郷の加護にある。恐らくラーンスロット卿の生い立ちに関係するのだろうが、妖精郷の加護を受けることである物が投影可能になる事だな」
そう言って、シロウはじっと私を見つめてくる。
確かにサー・ラーンスロットはその幼少時代を妖精郷で過ごし、”湖の騎士”と呼ばれるようになりましたが……
ま、まさかっ!
「シロウ……鞘、ですか?」
「なっ?!」
私も凛も目を見開いて、シロウの言葉を待つ。
「ああ、アルトリアが生前失くしてしまった鞘が俺の体内にあるって事はルヴィアに聞いた。この胴鎧を着用していれば、"
信じられない……私の聖剣の鞘を投影できるなど……
「はぁ……士郎の出鱈目さもここまで来ると、真剣に考えるのがばかばかしくなるわね……」
全くです……凛。
「シロウ、鞘の投影が可能ということは、もしや"
「いや……そっちは無理だったな。俺の中で"
「もう良いわよ……士郎が何投影したって驚かないことに今決めたから。じゃあ最後の質問ね。士郎……あなた自分の雰囲気が……変わってるって自覚はある?」
「……」
凛の問いかけに、考え込むシロウ。
恐らく、以前からのシロウを知る人間なら誰もが気付くほどに変わったその雰囲気は……
凛と私ならば"誰"に似ているかなど、考えるまでも無く……
「……やはり、変わっているのか、俺は? ルヴィアにも同じ事を言われたのだが……」
という事は、シロウ自身には自覚が無いということですか……
「士郎……あの……あのね」
何かを言いよどむようにする凛の言葉に、
「凛」
シロウが被せるように話し出す。
「それに、アルトリア。すまないが俺には変わったという自覚は無い。だが……これだけは誓おう。世界の何がどう変わろうと、俺が君たちを護る!」
それは……以前のシロウの言葉ではないけれど……
それでも、その心の大切な場所は以前のままなのだと、私を安心させてくれた。
「うん、士郎」
「はい、シロウ」
思えば、本当に久しぶりな三人での食事は、私の大好きなシロウの料理だった事が何よりも嬉しく……
こうしたひと時が大切な思い出となるのだと、貴方が私に教えてくれたのだったと思い返していた。
もしも願いが許されるのならば、今ひと時だけで良いのです……この暖かい時間を止めて欲しい。
そして、彼等を護る力をどうか私に……
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