Fate / in the world

018 「The Ripper」 前編


 二月に入り、一段と冷え込みのきつくなった倫敦の街。
 それでも私の時代と比べると遥かに過ごしやすい冬に、現代の文明には感謝したいものだ。
 こうして料理の手伝いをしていても、蛇口からは温水が自然と出てくるなど、あの時代からは考えもつかない。
 もっとも、私が料理の手伝いをする事自体、考えもつかなかったのですが……
 そんな私が何故料理の手伝いをしているかといえば……明後日までシロウが不在のためだ。
 シロウは自身が所属する時計塔魔術戦闘科の野戦訓練合宿へと参加しているため、明後日まではメインコック不在の我が家となる。

 実際のところ……シロウは、ミス・カミンスキーが教官を務める魔術戦闘科において戦闘理論を学ぶようになってからというもの、その資質を開花させつつある。
 元々あの第五次聖杯戦争中にアーチャーの戦闘理論を憑依経験したことで、知識としての資質は持ち合わせていた。
 また私との鍛錬で、一対一の戦闘は人間という枠を超えるほどまでに成長している。
 それが、唯一彼の弱点でもあった対集団での戦略・戦術面を強化された事で、一気に戦闘者としてのレベルが押し上げられたのでしょう。
 その証拠に、昨年末に起こったリヒテンシュタイン公国での任務においても、最終的な作戦立案はシロウが行ったのですから。

 戦闘者としてのレベルが上がるという事は、彼が身を置く様な戦地において、その生存確率を引き上げるのは事実だ。
 この事に私は喜びこそすれ、なんら不満はない。
 ですが……正直、あの”紅い外套”はショックでした。
 もちろんあの紅い外套を纏ったところで、シロウがシロウであることになんら変わりは無い。
 それでも、私や凛がいくら足掻いたところで、運命が彼を"抑止の守護者"へといざなっているように思えてならない。
 現に、聖杯戦争後のシロウは、あまりにも過酷な運命に翻弄され続けている。
 イリヤスフィールの事、タイガの事……それはまるで、目に見えない誰かが彼の運命を弄んでいるかのような……

「ふぅ、いけませんね……何を弱気になっているのです。私としたことが……」

 むん、と自分に活を入れながら、ここ数日ですっかり癖になってしまった、胸元のネックレスを軽く握り締めるしぐさをする。
 これはどんな時にでも私に希望と理想を思い起こさせてくれる、魔法のネックレスなのだから。
 料理の下ごしらえが済み、蛇口をひねって水道を止めながら、改めてそのネックレスへと視線を落とす。
 私の、他人よりもほんの少しだけ慎ましい胸元を飾ってくれるこのネックレスは、先日、二月二日にシロウから贈られた物だ。
 ふと、あの夜の事を思い起こす。

『あのさ、アルトリア。今日でお前と出会ってちょうど二年だろ。いつもアルトリアには世話になってばかりだからさ、そのお礼って言うか……これ、受取ってくれないか』

 その日の夜、ディナーが終わると同時に、ぽりぽりと指で頬をかきながらシロウが手渡してくれた物は、シルバーのチェーンに通された小さな小さな"約束された勝利の剣(エクスカリバー)"だった。

『シロウ……これは……』

 突然のサプライズに驚きながらも、手渡された瞬間、私は理解できた。
 これは、売り物でもなく、物理的に作られたものでもない。
 この世界で恐らくシロウにしか出来ない方法で創られたものだという事が。

『へぇ〜、それってちゃんとした"約束された勝利の剣(エクスカリバー)"よね? ちみっちゃいけど』

 そう言いながら、凛が軽くシロウを睨んでいるのは仕方のない事でしょうね。
 それと、ちみっちゃいとはなんですか、ちみっちゃいとは……

『ああ、風王結界は流石に無理だけど、サイズ以外は本物の"約束された勝利の剣(エクスカリバー)"だぞ。等身大の"約束された勝利の剣(エクスカリバー)"は投影できないけど、このサイズならと思って挑戦したんだ。結局何十回も投影失敗したんだけど、なんとか一本できてさ。俺、アクセサリーなんて良く解からないからさ、それしか思いつかなくて……どうかな、アルトリア?』

 そんな不安げな顔をしなくとも、これ以上嬉しい贈り物などありません。

『今この時よりこのネックレスは私の宝物です。何があろうと肌身離さず持ち続ける事を誓います。シロウ、ありがとう』

『そっか、気に入ってくれたなら俺も嬉しいよ。それに、よく似合ってる』

 そう言って微笑むシロウ。
 こんな時に、そんな笑みを振りまくから、凛に怒られるのですよ?

『それって真名開放できたりして……』

『まさか、いくらなんでもそれは無いでしょう、凛』

『そうよね、いくら士郎がお馬鹿だって、それくらい考えてるわよねぇ』

 うふふふふと笑いあう私と凛の横で、いや〜な汗を流しまくっているシロウ。
 いえ、いくらシロウでも、それくらい考えているでしょう。

『……"約束された小さな勝利(ミニカリバー)"!!』

――ピカーン、チュドーンッ!!

『『『……』』』

 冗談のつもりで行った真名開放はものの見事にその力を引き出し、放出されたエネルギーはフラットの外壁をあっさりと突き破り、一条の光となって夜空高く舞い上がった。

『衛宮くん? あんたバカ?』

 すまないシロウ、私にはフォローできない……





Fate / in the world
【The Ripper 前編】 -- 蒼き王の理想郷 --





 あまり思い出したくない過去に思いをめぐらせていると、フラットの工房から凛とルヴィアゼリッタが出てきた。
 そろそろディナーの時間ですからね、規則正しい食事は大切な事です。

「あ、アルトリア。下ごしらえしてくれたんだ。悪いわね」

「いえ、具材を切っただけですので」

 凛と言葉を交わしながら、キッチンを入れ替わる。
 ここからは、彼女の出番だ。

「わたくしまでお世話になってしまって……悪いですわね、ミス・アルトリア」

「どうか気にしないでください、ルヴィアゼリッタ。貴女達の研究の手助けになれば私も嬉しい」

 そう言いながら、私とルヴィアゼリッタはダイニングのテーブルへと着く。

 昨年末の事件後、私も凛も例の"紅い外套"の事で、少し気落ちしていた。
 それを強引に立ち直らせたのは、今目の前に座っているルヴィアゼリッタだったりする。

『リンとミス・アルトリアの二人でもダメだと言うのでしたら、わたくしも全面的にご協力いたしますわ!』

 そう宣言した彼女は、足しげくこのフラットへと通いだすようになった。
 その結果、年明け早々にこの二人が共同研究の契約を締結したのは自然な流れなのでしょう。
 元々、同じ大師父を家系の源とし、同じ宝石魔術を得意とする二人だ。
 しかも属性は二人ともに五大元素(アベレージワン)で、目指すは同じく第二魔法。
 時計塔の主席争いをするこの二人が協力すれば、その成果は目を見張るものがあるのでしょう。
 もっとも、そのおかげで凛とルヴィアゼリッタのいさかいを止めるという仕事が、私とシロウの負担になりましたが……

「それにしても……あちら側の壁だけ色が違っているのには、何か理由がございますの? どこかミスマッチな雰囲気ですわ」

 通りに面した側の壁を指差しながら、ルヴィアゼリッタが問いかけてきた。
 う……答えたくありませんね、それは……

「これよ! これ! これのせいで壁がぶっ飛んじゃったのよっ!」

 私の胸元のネックレスを指差しながら、料理を運んできた凛ががぁぁ――っと吠える。

「あら、綺麗な剣のネックレスですこと……って、ちょっとお待ちなさい! ミス・アルトリア、それは!」

 まあ相手はルヴィアゼリッタなのですから、話しても構わないでしょう。

「はい、ルヴィアゼリッタの想像通り、シロウが投影魔術で創り出した"約束された勝利の剣(エクスカリバー)"のミニチュアです」

「ほんと、あいつの投影は出鱈目よねぇ。最強の聖剣をミニチュアサイズで創り出すなんて。しかもソレ、真名開放まで出来るのよ」

 呆れたように言いながら、料理を揃えた凛が着席し、ディナー開始となった。

「私もまさか真名開放が可能とは思いもよらず、冗談で試してみたところ……」

「そのせいで壁は吹っ飛ぶ、魔力は無駄使いのとんでもない事になったんだから! まあ、消費魔力がサイズに比例してたから良かったようなものの、もしも本物と同じだったらと思うと、ぞっとするわよ!」

 ええ、冗談で消えてしまった史上最初のサーヴァントになっていたでしょうね……

「……驚きを通り越して、言葉が出てきませんでしたわ。宝具を投影し、しかもそれが恒久的に存在し続け、真名開放まで出来るなんて……」

 私のネックレスをじっと見つめながら、ルヴィアゼリッタが呟く。

「だから言ったじゃない、士郎の投影は異端だって」

 暖かいスープに口をつけながら、凛が答える。

「異端などという言葉で片付けられるものではございませんわ……リン、シェロの魔術は本当に投影なのですか? これはあまりに異質すぎます!」

 料理に手をつけることも忘れ、真剣な眼差しで凛を見つめるルヴィアゼリッタ。
 その問いかけに、私も凛も食事の手を止め、ダイニングをピンと張り詰めた空気が支配する。

「……そうね……ルヴィアなら気付くとは思ってたわ。まあ、あなたなら話しても良いんだけど……きっとその時が来れば、直接士郎がルヴィアに話すわよ。いいえ、いやでも士郎の本当の力を見る事になるはずよ」

「そう、ですか……シェロの本当の力……そうですわね、それではシェロがわたくしに話していただける事を、楽しみにしておきますわ」

「たぶん、目の当たりしたら、ルヴィアだってそんな暢気な事言ってられないと思うわよ……」

「まったくです……凛の時は殺意を押さえるのに苦労したのですね、確か……」

 私と凛が揃って溜息をつくさまに、ルヴィアゼリッタが怪訝な表情を浮かべているが、まあ、見てのお楽しみということでしょう。
 もっとも、あの風景はあまり見たくは無いのですが……
 あれは、あまりにも哀し過ぎる風景ですから……







 ディナーの後のティータイムをリビングで過ごしていると、

――チャンチャンチャン、チャンチャンチャン、チャンチャンチャンチャンチャンチャチャチャン♪

「あら? 桜から電話ね」

 そう言って凛が携帯を片手にテラスへと移動していく。
 それにしても、凛。桜からの着信音、ベタですね。

「サクラとはリンの友人なのですか?」

 そういえばルヴィアゼリッタは桜の事を知らないのでしたね。

「いえ、桜は友人では無く」

 答えようとした私の声を遮るように、凛が答えた。

「妹よ、私のね」

 手短な用件だったのでしょうか、すぐにリビングへと戻ってきたリンがソファーに深く腰掛けながら紅茶を口にする。

「リンにも妹がいらっしゃったのですね、急用でしたらわたくしは失礼いたしますわよ?」

 そう言ったルヴィアゼリッタは悲しげな笑顔で凛を見ている。
 しかし、今の言葉からすると……

「あ、ううん、違うのよ。あの子は昔、マキリの養子になってね、そこに慎二っていうバカ兄貴がいるんだけど、なんだか連絡がつかないらしいのよ。それで、こっちに連絡がきてないかって事だったんだけど、あいにく士郎が今いないでしょ。だからわかんないのよねぇ」

「またですか……こまったものですね、慎二にも」

 そう、"また"なのだ。
 他府県の大学へと進学した慎二は、一人暮らしを始めたらしいのですが、しょっちゅう連絡がつかなくなり、そのたびに心配した桜が連絡してくる。
 しかも、慎二と交流があるのはシロウだけだというのに、必ずといって良いほど凛へと連絡を入れてくるのだ。
 もっとも、慎二の行方不明はとっかえひっかえ付き合っている女性の家へと転がり込んでいるだけのことなのですが……

「ほんとよ、あのバカ兄貴の事で、なんでわたしが手を煩わせないといけないってのよ、まったく!」

 凛の怒る気持ちも解かりますね。

「それはそうと、ルヴィアゼリッタ。貴女にも妹がいるのですか?」

「え?」

 私の言葉に目を丸くした凛がルヴィアゼリッタを見やる。

「あ、そっか。そうよね、エーデルフェルトの当主なんだから"天秤"てことよね」

 凛の言う"天秤"とは、あの量りの事……ではないようですね。

「リンはご存知でしたのね。ミス・アルトリアの仰る通り、わたくしにはクリスティーナ・エーデルフェルトという双子の妹がおりますのよ。代々エーデルフェルトの当主は女性の双子の魔術師が勤めることとなっておりますの。ですから、わたくし達を"天秤"と呼ぶ事があるのですわ」

 なるほど、そういう事だったのですか。

「へぇ〜、それじゃルヴィアがお姉さんなのね。でも、妹さんは時計塔には来なかったの?」

「クリスティは、わたくしと比べても遥かに合理的な考え方をする魔術師なのです。一切の無駄を省き、必要なものはどんな手段をも厭わずに手に入れ、ひたすらに根源だけを目指す一流の魔術師なのです。クリスティにとっては、時計塔の講義さえも無駄なものと判断されたのでしょうね。資金を集め、協会でのエーデルフェルトの地位を確固たるものとし、力とコネを広げて研究に利用する。そして使えないもの、使えなくなったものは、一切の情け容赦なく即座に切り捨てる。昔は、あんな子ではなかったのですが……」

 凛の問いかけに答えるルヴィアゼリッタの声は、その言葉の最後へと向かうにつれ、消えいらんばかりの小さなものへとなっていく。

「……ごめん、ルヴィア。むやみやたらと他家の内情に首突っ込むなんて、わたしが馬鹿だったわ。でもまぁ、お互い妹の事では気苦労が多いみたいね」

「……そう、ですわね」

 こういう時、シロウが居てくれたなら無意識に空気を変えてくれるのですが……

「「「はぁ……」」」

 私達は三人そろって溜息のティータイムを過ごした。







 ティータイムの後、工房にて実験再開となったのですが、

「あっ! しまった……実験用の宝石、カッティングしたまま時計塔の工房に忘れてきちゃったわ」

 "えへへ"と笑っている場合ではありませんよ、凛。
 となりで、ルヴィアゼリッタが怒りに肩を震わせていますので……

「リン! あなたはどうしてここ一番というときに決まってポカをやらかすのですかっ!」

「わ、わたしだって好きでやってるわけじゃないわよっ! これは遠坂家に伝わる呪なんだからっ!」

 がぁ――っと怒鳴りあいながら牽制しあうあくまが二人。

「凛もルヴィアゼリッタも落ち着いてください。時計塔ならばここから近いのですから、今からでも取り行けばよいだけの事ではありませんか」

 はぁ、シロウ早く帰ってきてください。

「うぅ……まあ、それはそうなんだけどね。今、ちょっとこの時間帯に出歩くのは拙いのよねぇ」

「そうでしたわね、あの噂がありましたわね」

 はて? 何のことでしょうか?

「一体、何だというのですか? それに噂とは?」

「う〜ん、あのね。ここの所、ホワイトチャペルやシティ内で連続婦女殺人事件がおきてるでしょ」

「ああ、テレビのニュースなどで取り上げられている、確か"ジャック・ザ・リッパー"の再来というあれですね」

 年明けより、倫敦のシティ内やホワイトチャペル地区において、女性ばかりを狙った連続殺人事件が多発している。
 ニュースによれば、深夜の人気のない路地で殺された被害者の女性達は、皆殺害後に臓器を切り取られていたらしい。
 なんとも陰惨な事件であり、犯人はまだ捕まっていないはずですが……

「そう、その"ジャック・ザ・リッパー"事件なんだけど、一般の報道じゃ知らされてない事があるのよ……」

「被害者の女性は、その全てが金髪・碧眼の女性魔術師ばかり、という事ですわ」

 凛とルヴィアゼリッタの答えに、事件の性質が見知ったものから百八十度方向性を変えていく。

「……つまり、意図的に魔術師を狙ったこちら側の世界の事件、という事なのですね?」

「そういう事よ。それで、時計塔内部でも特に女性魔術師には夜間の外出を控えるようにって通達が出てるのよ」

「まったく……迷惑な話ですわ」

 確かに、その通りですが。
 凛は黒髪、ルヴィアゼリッタは金髪ですが、碧眼ではありません。

「しかし、二人とも魔術師ではありますが、金髪、碧眼ではないではありませんか? それに、護衛なら私に任せていただければ」

 私がそこまで言うと、凛とルヴィアゼリッタは揃って私を指差した。

「「金髪・碧眼!」」

 はぁ? いえ、確かに私は金髪で碧眼ではありますが……

「私は騎士であって魔術師ではありません! それに、万が一犯人が襲ってきたとして、一体どうすれば私が負けるというのですか?」

 なめて貰っては困ります。
 これでも騎士王と呼ばれ、ブリテンを統べた者なのですから!

「そう言われてみれば、そうよねぇ……」

「ミス・アルトリアがいれば、安全ですわね……」

 お互いに顔を見合わせながら、頷く凛とルヴィアゼリッタ。
 まあ、解かっていただければ、それで良いのです。

「では、出かける準備を。何れにしろ、急ぐに越した事はありませんので」

 二人の準備が整うのを待ち、私達はそろって深夜の倫敦を時計塔へと向かっていった。







 フラットを出て、リージェントパークの外周路へと突き当たる。
 流石に深夜1:00のこの時間帯には、人影もなく冬の冷たい空気があたりを支配しているだけだ。
 夜の闇のなか所々にポツンポツンと光るパーク内の街燈だけが僅かな灯かりとなって道を照らす。
 その闇の静けさを、忘れもしない感覚が切り裂いていく。

「凛! これは!」

「アルトリア、あなたにも感じ取れたって事は、そういう事なんでしょうね……」

 やはり、凛も私と同じ考えでしたか。

「な、何ですの、この異常な魔力は!」

「考えたくはないんだけど……これは、サーヴァントよ」

「はい、恐らく間違いないでしょう」

「そんな、どういう事なのです?」

「わたしにだって解からないわよ。解からないけど、あれは現実よ!」

 そう言って凛の指差す方向、リージェントパークの中には、喉を切り裂かれ血まみれで倒れている金髪の女性と、その側に古めかしい魔道書のような本を持った男が一人立っている。
 いや……もう一人、尋常ならざる魔力を放ちながらも、黒い霧のようなものにその体を覆われ、輪郭をぼかしたように見えるサーヴァントがいた。

「ば、馬鹿なっ! 貴公が何故?!」

 そうだ、私は彼を知っている。
 いや、この私が彼を忘れよう筈がないではないか。

「アルトリア? どうしたの、アルトリア?!」

 凛の声がまるで遠くで聞こえているようだ。
 私は一体何をしているのか?

「あの男は……」

 心配そうな凛の声といぶかしむルヴィアゼリッタの声に気付いたのか、魔道書を持った男が毒づく。

「チッ! やっかいな奴に見つかったな。おい、引き上げだ!」

 男がそういうなり、黒い霧に覆われたサーヴァントは男を抱え夜の闇へと消えていった。

「ちょっと、アルトリア! 一体どうしちゃったのよっ!」

「凛……私は……」

 あのサーヴァントを見た瞬間から、私の体は動かなくなってしまっていた。
 これは夢だろうか?
 それとも、神の下した罰なのだろうか?
 私は、どうすれば……






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